愛知県豊田 土着性と浮遊性

愛知県豊田 土着性と浮遊性。橋の下世界音楽祭

愛知県豊田。日本を代表するTOYOTAの企業城下町。この町から世界へ向けて発信されてしかるべきフェス(祭り)がある。豊田を拠点に活動を続けるTURTLE ISLANDの永山愛樹と彼の意志を祭りという形にしようとする参加者たち。自分はどこに、そして何に帰属しているのか。そんなことを〈橋の下世界音楽祭〉は考えさせてくれる。河川敷ということもあって、許可は開催直前までなかなか降りない。今年も無事に自分という個人と世界を繋ぐフェスは橋の下で開催された。


文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 林 大輔 photo = Daisuke Hayashi


 ここでしか体験できない時間が、豊田の橋の下に存在していた。フェスではあるのだけど何かが違う。何かではなく、すべてが違うと言っていいかもしれない。入場料がないフリーフェスという点もその原因のひとつには違いないのだけれど、どうもそれだけではない。得体の知れない大きな魔物、人を惹きつける何かが〈橋の下世界音楽祭〉にはあるようだ。


 今年になってやっと参加することができた。なぜ今まで来ていなかっただろうという思いが、そこで時間を過ごすうちに大きくなっていく。フェス(あるいは祭り)は参加した人がつくり上げていくものだと信じてきたけれど、それが〈橋の下〉で確信に変わった。与えられるものだけで満足するのではなく、何かを祭りに返していく。そのスタンスが、この祭りに参加していた人には貫かれていたように思う。


 TURTLE ISLANDT字路sOKIDUB AINU BAND、アフリカのタミクレストや中国・内モンゴルの九宝など、ステージに立つバンドのラインナップは、日本と世界を繋ぐという意志が感じられる。メインとなるライブというコンテンツも〈橋の下〉ならではのものなのだけれど、それ以上にこの祭りを彩っているのが、そこにいるすべての人だと言えるかもしれない。出店者たちが自分のブースでタイムテーブルに掲載されていないことをはじめる。それが許されている自由。前号のインタビューで、オーガナイザーの永山愛樹は「何も決めないことがルール」と言っていたけれど、その意味が参加して深くわかった。自分が祭りを作るメンバーであるならば、責任を共有しなければならない。責任を自覚したうえで遊ぶ。

 

 阿波踊りや郡上踊り、琉球のエイサーなど日本の伝統とロックやダンスといったライブ。フェスと祭りの融合であり、今という時代だからこそ誕生した新しいフェスなのだろう。だからこそ〈橋の下〉は誰でも参加できるために無料でなければならない。


 愛樹はステージでこんなことを言った。「世の中で戦争が続く限り〈橋の下〉を続ける」。祭りとは何なのか、フェスとは何を描かなければならないのか。もっともっと深くその意義を追求したいし、〈橋の下〉はそれを考えさせてくれる。〈橋の下〉は奇跡のような時間と場所と言えるだろう。



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